はじめに |
平成21年3月に高等学校学習指導要領が改訂、告示され、平成25年度の入学生から適用される。現行の学習指導要領で初めて設置された普通教科「情報」の3科目は、共通教科「情報」の「社会と情報」、「情報の科学」の2科目に再編された。本研究は、新科目と現行科目を比較対照し、目標や指導内容を整理するとともに、具体的な学習指導の在り方についての研究成果を普及することで、各高等学校における学習指導の充実に資することを目的としている。
本稿では、「1.学習指導要領改訂の背景」として、教育基本法等の改正や中央審議会の答申等について述べている。続いて「2.共通教科『情報』について」として、新たに共通教科「情報」に設定された2科目について、目標及び内容の整理と具体的な学習指導の事例を記述し、最後に「3.教育課程の編成に際しての参考事項」として、各高等学校で共通教科「情報」の科目の設定を検討する際に参考となる事項について述べている。
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1.学習指導要領改訂の背景 |
(1)教育基本法、学校教育法の改正 |
平成18年12月22日に改正された教育基本法は、第2条第1項で、教育の目標を「幅広い知識と教養を身に付け,真理を求める態度を養い,豊かな情操と道徳心を培うとともに,健やかな身体を養うこと。」としている。また、平成19年6月27日に一部改正された学校教育法第51条には、高等学校における教育の目標として、次の3点が示されている。
1. |
義務教育として行われる普通教育の成果を更に発展拡充させて,豊かな人間性,創造性及び健やかな身体を養い,国家及び社会の形成者として必要な資質を養うこと。 |
2. |
社会において果たさなければならない使命の自覚に基づき,個性に応じて将来の進路を決定させ,一般的な教養を高め,専門的な知識,技術及び技能を習得させること。 |
3. |
個性の確立に努めるとともに,社会について,広く深い理解と健全な批判力を養い,社会の発展に寄与する態度を養うこと。 |
(下線部は改正された部分) |
同時に、これらの目標の達成のために、「基礎的な知識及び技能を習得させるとともに,これらを活用して課題を解決するために必要な思考力,判断力,表現力その他の能力をはぐくみ,主体的に学習に取り組む態度を養うことに,特に意を用いなければならない。」とされている(同法第30条第2項及び第62条)。
また、同法第21条第4項に、「家族と家庭の役割,生活に必要な衣,食,住,情報,産業その他の事項について基礎的な理解と技能を養うこと。」とされ、義務教育の目標に情報教育が追加された。 |
(2)「知識基盤社会」と「生きる力」 |
「知識基盤社会」とは、新しい知識・情報・技術が政治・経済・文化をはじめ社会のあらゆる領域での活動の基盤として飛躍的に重要性を増す社会のことである。生徒たちがこれから生きていく社会は、まさにこの「知識基盤社会」であり、そこで必要な力が「生きる力」である。
平成8、9年の、中央教育審議会による「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について」と題した二つの答申は、平成11年に告示された現行の高等学校学習指導要領の基礎となったものであるが、その中で「あふれる情報の中から、自分に本当に必要な情報を選択し、主体的に自らの考えを築き上げていく力」(文部省
1996)が「生きる力」の重要な要素として記載されている。文部科学省ホームページの「学習指導要領改訂の基本的考え方」には、「生きる力」は次のように記載され、この理念は新学習指導要領に引き継がれるとされている。
これは、いわゆる“知・徳・体”について示されたものであり、これらを育成することが、先に述べた改正教育基本法における教育の目標に通じている。ここには「自ら課題を見つけ、問題を解決する資質や能力」が規定されている。
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