「社会と情報」対応表
「情報の科学」対応表
テーマ1「WEBページによる表現と伝達」
テーマ2「情報通信ネットワークとコミュニケーション」
テーマ3「ディベートを用いた問題解決」
テーマ4「“Squeak”プログラミング」
授業展開例1「そのページ、正しく伝わってる?」
授業展開例2「使ってみよう、校内メール・BBS」
授業展開例3「班対抗ディベート大会」
授業展開例4「“Squeak”で学ぶプログラミング」
「社会と情報」アイデア集
「情報の科学」アイデア集
新科目の概要
【新高等学校学習指導要領と新科目の概要】
5ページ
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2.共通教科「情報」について
(続き)
(3)「情報の科学」について
3ページの引用にあるように、「情報の科学」は、情報教育の目標の3観点のうち「情報の科学的な理解」を重視し、現行の「情報B」の後継科目となっている。「情報の科学的な理解」は、平成9年の「情報化の進展に対応した初等中等教育における情報教育の推進等に関する調査研究協力者会議」による第1次報告「体系的な情報教育の実施に向けて」の中で、「情報活用の基礎となる情報手段の特性の理解と,情報を適切に扱ったり,自らの情報活用を評価・改善するための基礎的な理論や方法の理解」と定義されている。この定義から、「情報の科学的な理解」とは、コンピュータや情報通信ネットワークといった情報手段の種類やメカニズムを理解するだけではなく、それらを理解した上で、数ある情報手段の中から適切なものを選択し活用しながら、自らの情報活用の評価・改善方法を理解し、実際に行えるようになることだと考えられる。
(表4)目標の比較
情報の科学
情報B
情報社会を支える情報技術の役割や影響を理解させるとともに,
情報と情報技術を問題の発見と解決に効果的に活用するため
の科学的な考え方を習得させ,
情報社会の発展に主体的に寄与する能力と態度を育てる
。
コンピュータにおける情報の表し方や処理の仕組み,情報社会を支える情報技術の役割や影響を理解させ,問題解決においてコンピュータを効果的に活用するための
科学的な考え方や方法
を習得させる。
(表5)「情報の科学」の内容構成
( )内は対応する普通教科「情報」の科目
(1)
コンピュータと情報通信ネットワーク
ア
コンピュータと情報の処理
(
B
,C)
イ
情報通信ネットワークの仕組み
(C)
ウ
情報システムの働きと提供するサービス
(C)
(2)
問題解決とコンピュータの活用
ア
問題解決の基本的な考え方
(A,
B
)
イ
問題の解決と処理手順の自動化
(
B
)
ウ
モデル化とシミュレーション
(
B
)
(3)
情報の管理と問題解決
ア
情報通信ネットワークと問題解決
(A)
イ
情報の蓄積・管理とデータベース
(
B
)
ウ
問題解決の評価と改善
(新規)
(4)
情報技術の進展と情報モラル
ア
社会の情報化と人間
(A,
B
)
イ
情報社会の安全と情報技術
(A,
B
)
ウ
情報社会の発展と情報技術
(
B
)
「情報の科学」と「情報B」の目標を比較すると(表4)、「科学的な考え方」を習得させることは共通しているが、習得させる目的が、「問題解決においてコンピュータを効果的に活用するため」から、「
情報と情報技術を問題の発見と解決に効果的に活用するため
」になった。そして、そのための科学的な考え方の習得を通して、「
情報社会の発展に主体的に寄与する能力と態度を育てる
」ことを目標としている。「情報B」では「科学的な考え方や方法」の習得が目的であることと比較すると、情報教育の目標の他の2観点「情報活用の実践力」、「情報社会に参画する態度」も含まれていることが分かる。
「情報の科学」は、問題解決が重視された構成となっている。「(2) 問題解決とコンピュータの活用」で問題解決の方法を習得させ、「(3) 情報の管理と問題解決」でその過程と結果に対する評価・改善の意義や方法を学習させることになっている。(2)ではアルゴリズムやコンピュータによる処理手順の自動実行、モデル化とシミュレーションが取り上げられ、(3)では評価・改善の考え方にいわゆるPDCAサイクルが取り入れられている。ここでは特に評価・改善の場面における生徒同士による相互評価といった活動が重要になる。
表5は「情報の科学」の内容構成を現行の3科目と比較して作成した「対応表」の概略であるが、12項目の内「情報B」の内容を含む項目が8項目、新規に加えられた項目が「(3)ウ 問題解決の評価と改善」である。他は「情報A」または「情報C」の内容を含んでいる。
本研究では、「情報の科学」の授業展開例として「“Squeak”プログラミング」をテーマとして実践を行った。現行の「情報B」の授業で行われたものだが、その学習内容は、「情報の科学」の内容にも対応している。
テーマ4 「“Squeak”プログラミング」
「
“Squeak”で学ぶプログラミング
」
※
「(2) 問題解決とコンピュータの活用」の「ア 問題解決の基本的な考え方」、「イ 問題の解決と処理手順の自動化」及び「ウ モデル化とシミュレーション」に対応
本研究では「情報の科学」の授業展開例として、「(2) 問題解決とコンピュータの活用」の授業を取り上げた。新学習指導要領では、この部分の「内容の取扱い」に「学校や生徒の実態に応じて,適切なアプリケーションソフトウェアやプログラム言語を選択すること。」とあるが、この授業ではプログラミング用フリーソフトウェア“Squeak”(スクイーク)を利用した。
“Squeak”の実行中の画面
※生徒が描いたイラストを
用いている
“Squeak”は、命令の書かれたタイルをマウス操作によって配置することでプログラミングを行う、タイルスクリプティングを採用している。複雑なコード入力を必要としないので、入力ミスによる動作不良が少ないことや、自分が描いたイラストを操作できることなどから、初めてプログラミングを学習する生徒にも扱いやすいソフトウェアである。
この授業では、正多角形を描画させる単純なプログラムを用いて「プログラムの順次処理」の原則を理解させた後、徐々に条件分岐や配列、乱数を使った複雑なプログラミングを学習させていった。車のライントレースや、サイコロ、おみくじといった題材を用意したことで、生徒の興味・関心を高めることができた。
最終的には、昆虫や動物の動きのシミュレーションや、サイクロイド曲線の描画といったプログラミングも可能であり、より正確なシミュレーション方法を考えることなどが、問題の発見から解決に至る過程の学習につながる。イラストにやや複雑な動作を行わせるようなプログラムを組み立てるためには、基礎的なプログラムを基に、段階を踏みながら応用していくことが必要である。その中には、フローチャートやアルゴリズムの考え方を用いることも含まれる。こうした学習が、新学習指導要領における「問題の発見,明確化,分析及び解決の方法を習得させ,問題解決の目的や状況に応じてこれらの方法を適切に選択することの重要性を考えさせる。」及び「問題の解法をアルゴリズムを用いて表現する方法を習得させ,コンピュータによる処理手順の自動実行の有用性を理解させる。」に対応している。
「情報の科学」では、プログラミング実習は大きな内容の一つであるが、この授業展開例を参考にしていただきたい。
引用・参考文献は
こちら
をご覧ください。
※引用文中の下線は、神奈川県立総合教育センターが加えたものです。
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