高等学校共通教科「情報」 新科目の内容と授業アイデア

新科目の概要
 【新高等学校学習指導要領と新科目の概要】

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2.共通教科「情報」について(続き)
(2)「社会と情報」について
(表2)目標の比較
社会と情報 情報C
情報の特徴と情報化が社会に及ぼす影響を理解させ,情報機器や情報通信ネットワークなどを適切に活用して情報を収集,処理,表現するとともに効果的にコミュニケーションを行う能力を養い,情報社会に積極的に参画する態度を育てる。 情報のディジタル化や情報通信ネットワークの特性を理解させ,表現やコミュニケーションにおいてコンピュータなどを効果的に活用する能力を養うとともに,情報化の進展が社会に及ぼす影響を理解させ,情報社会に参加する上での望ましい態度を育てる。

(表3)「社会と情報」の内容構成
( )内は対応する普通教科「情報」の科目
(1) 情報の活用と表現
 情報とメディアの特徴(新規)
 情報のディジタル化(A,B,
 情報の表現と伝達(A,
(2) 情報通信ネットワークとコミュニケーション
 コミュニケーション手段の発達(A,
 情報通信ネットワークの仕組み(B,
 情報通信ネットワークの活用とコミュニケーション(A,
(3) 情報社会の課題と情報モラル
 情報化が社会に及ぼす影響と課題(A,B,
 情報セキュリティの確保(新規)
 情報社会における法と個人の責任(A,
(4) 望ましい情報社会の構築
 社会における情報システム
 情報システムと人間(B)
 情報社会における問題の解決(A,B)
 3ページの引用にあるように、「社会と情報」は、情報教育の目標の3観点のうち「情報社会に参画する態度」の育成を主なねらいとしており、「情報C」の後継科目となっている。
 「社会と情報」と「情報C」の目標を比較すると(表2)、まず「情報の特徴」を理解させることが新たに加えられたことが分かる。また「コンピュータなどを効果的に活用」することが「情報機器や通信ネットワークなどを適切に活用」することになり、情報を「処理」することが追加されている。そして「コミュニケーションを行う能力を養」うことが追加され、「情報社会に積極的に参画する態度」を育てることを目標としている。このように、コンピュータ等の情報機器をツールとして扱う方法を習得しながら、コミュニケーション能力の育成を重視したものと読み取ることができる。
 情報の授業では、「情報機器の操作に関する指導」に時間を割かれがちであるが、それだけではこの目標の達成につながらないことは明白である。
 「社会と情報」は、情報教育の目標の3観点のうち「情報社会に参画する態度」を重視した科目であるが、共通教科「情報」の目標にあるとおり、3観点をバランスよく学習させる必要があるので、他の2観点についての指導を行わないということではない。
 本研究では、「社会と情報」の内容構成を現行の3科目と比較して「対応表」を作成した。表3はその概略であるが、12項目の内8項目が「情報C」の内容を含んでいる。他に「情報A」、「情報B」の内容を含むものもあり、新規項目は「(1) ア 情報とメディアの特徴」と「(3) イ 情報セキュリティの確保」である。

 本研究では、「社会と情報」の授業展開例として三つのテーマで実践を行った。いずれも現行の「情報A」の授業で行われたものだが、その学習内容は、「社会と情報」の内容にも対応している。

テーマ 1 「WEBページによる表現と伝達」 
そのページ、正しく伝わってる?

※「(1) 情報の活用と表現 ウ 情報の表現と伝達」に対応
 WEBページを使った情報発信では、情報をより分かりやすく伝えるために、発信者のページを、受信者がどのように読み取っているのかを確認することは大切である。
 この授業では、班の中で決めた受信者役がWEBページを読み取り、その様子を観察させ、「画面のスクロールを繰り返している」、「リンク先のページとトップページを行ったり来たりしている」等、気付いたことを記録させた。その記録を基に、なぜそのような動作を行ったかを話し合わせ、文字と画像の配置や色使いの工夫など、的確に情報を伝えるための配慮や工夫を認識させ、WEBページの改良につなげた。
 情報の発信者がWEBページの操作性を評価、改善する過程が、新学習指導要領における「情報を分かりやすく表現し効率的に伝達するために,情報機器や素材を適切に選択し利用する方法を習得させる。」に対応している。

テーマ2 「情報通信ネットワークとコミュニケーション」
使ってみよう、校内メール・BBS

※「(2)情報通信ネットワークとコミュニケーション ア コミュニケーション手段の発達」に対応

 多くの生徒が日常的に電子メールやBBS(電子掲示板)を利用しており、それらを利用する上でのルールやマナーについて考えさせることは重要である。校内LANを活用して、電子メールやBBSを使わせながらルールやマナーを身に付けさせることが、この授業のテーマの一つである。新学習指導要領における「情報通信ネットワークの特性を踏まえ,効果的なコミュニケーションの方法を習得させるとともに,情報の受信及び発信時に配慮すべき事項を理解させる。」に対応している。
 メールのやり取りは生徒同士に限らず、学級担任や部活動顧問にも送信させた。BBSへの書き込みも、初めは1年生だけが書き込める新入生キャンプの掲示板に限定したが、後には他学年の生徒も書き込める、部活動や文化祭等のすべての校内掲示板にも自由に書き込ませた。
 これらの活動を通して、メールのやり取りやBBSの意見交換を行う際には、一人ひとりがマナーやルールを守って行動することが必要であると理解させた。こうした視点に基づき、「(3)情報社会の課題と情報モラル」の指導に関する授業としても取り扱うことができる。
 現行の学習指導要領が実施された平成15年度と比べ、生徒にとって携帯電話やインターネットがより身近になっているので、情報モラルの指導に関しては、いわゆる“光と影”のうち、特に“影”の部分について取り上げることが急務になっている。ただし、「(3)情報社会の課題と情報モラル」の「内容の取扱い」には「生徒が主体的に考え,討議し,発表し合うなどの活動を取り入れること。」とあり、単に“○○をしてはいけない”というルールを教えるのではなく、生徒に情報モラルを自らの問題として考えさせ、自らの行動にルールやマナーを反映できるような内容を取り入れるべきである。この授業では、メールやBBSの利用上のルールやマナーを守れているか、生徒に自分の行動を振り返らせた。

テーマ3 「ディベートを用いた問題解決」
班対抗ディベート大会
※「(4)望ましい情報社会の構築 ウ 情報社会における問題の解決」に対応
 この授業では、ディベートを題材として、聞き手に分かりやすく説明するためには、どのような資料を提示し、どのような説明をすればよいかを考えさせた。ディベートでは、肯定、否定のどちらに決められても、その立場で理論を構築するため、多くの情報の中から、自分の立場に必要な情報を的確に選択しなければならない。情報収集や資料作成のために、情報機器や情報通信ネットワークなどを活用することが考えられるが、こうした活動が、新学習指導要領における「情報機器や情報通信ネットワークなどを適切に活用して問題を解決する方法を習得させる。」に対応している。
 ディベートの準備をする授業で、班員同士の話合いにブレーンストーミングを用いた。話合いを重ね、お互いの意思の疎通を図ることは、「社会と情報」の目標である「コミュニケーションを行う能力を養成すること」につながる。そしてディベートで自分たちの主張を論理的に説明したり、相手の説明に対して的確に反(ばく)したりすることは、新学習指導要領で重要とされている「言語活動の充実」そのものである。「各科目にわたる指導計画の作成と内容の取扱い」1(1)に「情報科での学習が他の各教科・科目等の学習に役立つよう,他の各教科・科目等との連携を図ること。」とあるが、ディベートは、テーマ設定を工夫することなどで他教科との連携を図れる題材でもある。

引用・参考文献はこちらをご覧ください。

※引用文中の下線は、神奈川県立総合教育センターが加えたものです。

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