平成20年1月に、中央教育審議会の「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善について(答申)」(以下「H20答申」という。)が示された。これは前述の法改正や「生きる力の育成」の趣旨を踏まえたもので、今回の高等学校学習指導要領の改訂は、これに沿って行われている。よって、H20答申の内容をまとめることが、新高等学校学習指導要領の改訂のポイントをつかむことになる。
H20答申の中で、「学習指導要領改訂の基本的な考え方」として項目立てられているのは次の7項目である。
(1) 改正教育基本法等を踏まえた学習指導要領改訂
(2) 「生きる力」という理念の共有
(3) 基礎的・基本的な知識・技能の習得
(4) 思考力・判断力・表現力等の育成
(5) 確かな学力を確立するために必要な授業時数の確保
(6) 学習意欲の向上や学習習慣の確立
(7) 豊かな心や健やかな体の育成のための指導の充実 |
(中央教育審議会 2008「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善について(答申)」 p.21〜p.29) |
このうち、(3)、(4)、(6)の内容は前記の学校教育法第30条第2項にも含まれており、新高等学校学習指導要領の「第1章 総則」には、この3項目に関して次のように記載されている。
学校の教育活動を進めるに当たっては,各学校において,生徒に生きる力をはぐくむことを目指し,創意工夫を生かした特色ある教育活動を展開する中で,基礎的・基本的な知識及び技能を確実に習得させ,これらを活用して課題を解決するために必要な思考力,判断力,表現力その他の能力をはぐくむとともに,主体的に学習に取り組む態度を養い,個性を生かす教育の充実に努めなければならない。 |
(高等学校学習指導要領 p.15) |
また、H20答申では、3項目の内「思考力・判断力・表現力等の育成」について、全国学力・学習状況調査や国際的な学力調査(OECDのPISA調査等)によって課題があることが示されたとして、思考力・判断力・表現力等の育成のための活動を6項目例示している。
1.体験から感じ取ったことを表現する
2.事実を正確に理解し伝達する
3.概念・法則・意図などを解釈し、説明したり活用したりする
4.情報を分析・評価し、論述する
5.課題について、構想を立て実践し、評価・改善する
6.互いの考えを伝え合い、自らの考えや集団の考えを発展させる |
(中央教育審議会 2008「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善について(答申)」 p.25) |
これらはいずれも、主として「言語」を使うことを前提とした活動であり、「言語活動の充実」に大きくかかわっている。同時に、コンピュータ教室を始めとする、学校におけるICT環境の整備が進む中では、1から6のいずれの活動においても、生徒がコンピュータや情報通信ネットワーク等の情報手段を用いる機会が増えることが想定される。これらを踏まえ、H20答申では普通教科「情報」の「改善の具体的事項」の中で、次のように述べている。
情報活用の実践力の確実な定着や情報に関する倫理的態度と安全に配慮する態度や規範意識の育成を特に重視した上で、生徒の能力や適性、興味・関心、進路希望等の実態に応じて、情報や情報技術に関する科学的あるいは社会的な見方や考え方について、より広く、深く学ぶことを可能とするよう現行の科目構成を見直し、「社会と情報」、「情報の科学」の2科目を設ける。 |
(中央教育審議会 2008「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善について(答申)」 p.114) |
新高等学校学習指導要領における共通教科「情報」には、情報モラルが大きな柱として項目立てされている。H20答申には、「子どもたちに、基本的な生活習慣を確立させるとともに、社会生活を送る上で人間としてもつべき最低限の規範意識を、発達の段階に応じた指導や体験を通して、確実に身に付けさせることが重要である。」(中央教育審議会
2008 p.29)として、「学習指導要領改訂の基本的な考え方」の項目の7番目に道徳教育の重要性が盛り込まれている。併せて、「学校では家庭と連携しながら、情報モラルの育成、情報安全等に関する知識の習得などについて指導することが重要である。」(中央教育審議会
2008 p.65)として、情報モラルの指導の必要性が記載されている。情報モラルの指導については、4ページに関連した内容が書かれているので参照していただきたい。
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